軒先の風鈴 short story
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09 , 21
私は“アホ”だったか?



「アホ」
「アホとはなんだ?」
「原語を教えてさしあげましょう。阿呆です」

本気で首を傾げたルシフェン・クリステフ・ダルフに、向かいの女は薄く笑った。
確か名はアルティエ・パトリア・パトリキだったと記憶している。
医務軍部門の頂点にある女で、パトリア伯とかいう爵位を保持。

彼はそこまで思い出してから、彼女に背を向けた。

「・・・まだ仕事がある」
「死ね」

とげとげしい言葉が背中に突き刺さったが、彼は気にしなかった。
死ぬわけにはいかない。
(実際に彼女が望んでいたのは、そういうことではないはずだ)
ともあれ、部屋を後にする。

「おや、ルシフじゃないか」

そのまま今晩どう?とでも聞いてきそうな雰囲気で、いままで捜していた男が話しかけてきた。

「いままでどこへ行っておられました、我が師」
「うん、ちょっと購買にね。君にいちごジャムパンをご馳走しようと思って」
「我が師、残念ながら私は甘いものを好きません」
「何だ、食べてくれないのかい?」

なぜ突然そんなことを思いついたのかは謎だが、ルシフェンが師匠と仰ぐ男──クロノクロア・ルイ・アルフォットは上機嫌で、買い物袋を押し付けようとしてくる。
あまつさえ本当に心から残念そうな仕草まで“演じて”みせながら。

本当に苦手だ。この手合いは。

「・・・・・・・・・・・・御意」


歳など、数えなくなって久しい。
もしかしたら自分はすでにこの世にないのかもしれないし、そもそもこれ自体が夢なのかもしれない。
ただ明白なのは、くだらない人間と馬鹿は嫌いであるというだけだ。
彼らにはまともに話が通じない。
それからもう一つ嫌いな人種は、
内心と逆のことを、それがさも本心のことであるかのように騙る者だ。
今思い出したが、ついでに言動に矛盾がある人間も腹立たしい。
常に真理を模索する者こそ好ましい。

そういった思考の偏りとて、本来許されるべきものではないと自覚してはいるのだが。
それに比べれば職務怠慢など、いかに愛らしいものであるだろう。

──私は、自己正当化も潔くないと自戒している。
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